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淺井裕介 「誕生日の森 〜父の木、母の山〜」

土、水、水性ペンキ 

縦 780cm×横 650cm × 高さ 300cmの教室の壁面及び天井

淺井裕介は、WAFが誕生して一番最初に招聘した画家だ。以来、今もずっと淺井裕介という作家がこのプロジェクトのものさしになっている。作品への向かい方。生み出したものへの慈しみ。作家の人生そのものと作品のありよう。

古来芸術家は、作品を後世に残すことに心を砕いてきた。けれど、淺井は、作品がこの世界にずっと残っていくことが「重く思えてならない」という。それはこのモノが溢れる時代にいる者の節度だ。また、いつでもどこでも描きたいときに描きたい一心で、いつでも消せる方法をあみ出した。たまったホコリに描く、マスキングテープで描く、現地の泥で描き、最後には大地に戻して終える。そんな彼の想いは、学校で開催するこのプロジェクトの指針と合致していた。学校の壁を借りて、なんの既成概念も持たない子どもたちに見せる芸術祭だから、渾身の力を振り絞る姿と結果をきちんと見せたい。そして、その後、壁は白く戻す。彼らがまた何かを始めるために。私たちは、その瞬間のスパークを彼らの中に印すことに必死だ。

淺井の土採集の行程につきあうと、彼がこの大地をものすごくまっすぐに信じているんだなぁ、と感じる。だから大地も彼に力を与える。大地の暗号を読み解く方法を。そして暗号の解読法を、教えられなくても生まれたときから知っているワルリの村の子どもたち。彼らは、細かく砕き、ふるいにかけて土を絵の具に変えていく作業に、まるで現代っ子がゲームに熱中するように夢中だった。

「キミたちの命は祝福されている」

それは作家、淺井裕介だけではなく、私たちが彼らに伝えたいことでもある。

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