山野勇気「未来龍ワルリ大空凧2」
「おれら人間にはテレパシーの能力があるんだよね。今回、それをすごく感じたね」と遠藤一郎。彼の、日常をぐるっと反転させて非日常に持っていく力技には毎回舌を巻く。その根底には、神秘主義とは無縁の、ひたすら信じきる潔さがある。
先住民族が先祖代々暮らしてきた村を背景とした学校を舞台にWAF2014は開催されたわけだが、寄宿学校の600人余りの生徒たちと日印の100人余りのボランティアの心をぎゅっと束ねて、ビッグバンにまで牽引したのは、彼のプロジェクトだった。巨大な塔と竹のみこしに5人のキャラクターをちりばめ、構内には「ビカビカ、にょろにょろ」な壁画、村の広場では毎日子どもたちの夢が描かれた連凧があがる壮大なインスタレーション。ざわざわざわとした気持ちが起こって、何かを待ち望む、わくわく感が同時多発的にいろんな場所で芽生えた。テレパシーでピッピッと呼応しあって、ざわざわの渦が加速していった。それを土着的な祭りではなく、アートで実現しちゃうなんて、遠藤一郎しか考えないだろう。
テレパシーの能力を引き出すためには努力も必要だ。子どもたちを見て、全体を見て、綿密に事を起こすタイミングをはかることに全身全霊を傾けた。
「加茂や淺井の部屋ですごい壁画が出来上がりつつある中、おれらのプロジェクトがこのフェス全体をひっぱっていくってわかっていたから、絶対に失敗できなかったんだよね」終盤、彼の足元に手をおいてインド式の最敬礼をする子どもまで出てきた。インドの子どもたちが、遠藤一郎みたいな存在がいると知るだけでも、すてきな化学変化が起きるのでは?
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